問題提起
世界を広く見渡すと、インフラの老朽化という問題が深刻化しています。残念ながら、インフラ資産を管理するサービスプロバイダーは、その管理する施設の維持・更新を必ずしも十分に行えていないのが現状です。例えば、米国の水道インフラの老朽化を例にとると、2050年までに耐用年数を迎えた水道管の交換に約1兆ドルの設備投資が必要になると試算されています(AWWA)。米国の水道管インフラは、1800年代後半から1970年代にかけて設置されたため、そのほとんどが少なくとも40年以上経過しており、60~80年経過しているものも少なくありません。水道管の耐用年数は60〜100年と言われており、今後ますます水道管の交換が必要になってきます。しかし、多くの国民は、このような状況や、水道料金の値上げという形で負担することになる現実を十分に理解していません。この問題は米国に限ったことではなく、欧州の大半はさらに古い水道管を使用しており、世界のほとんどの国で同様の問題が発生しているのです。
この問題をさらに検討すると、公共インフラに特有の2つの基本的な特徴が見えてきます。
  1. 1.
    サービス提供者と市民との間の情報へのアクセスの不均
  2. 2.
    現状に挑戦する一般的なインセンティブが当事者間で欠如していること
インフラサービス事業者は、公的機関によって管理されていたり、政府機関によって厳しく規制されていることが多く、効果的かつ効率的なビジネス手法を取り入れるためのリソースを投資するインセンティブがない場合が多くあります。一方、インフラの受益者である一般市民は、自分たちが利用するインフラの状況を知る術を持たず、事業者に働きかけたり、より効率的な運営を支援する活動に参加するインセンティブが乏しいのが現状です。このような問題を放置しておくと、地域社会に大きな混乱を招き、貴重な資源を大幅に損失することになってしまいます。

アメリカの水道管の時代

南北戦争前から公民権運動の時代まで、アメリカの水系はさまざまな時代を反映しています。
毎年、約24万件の水道管の破損により、水が失われ、日常生活に支障をきたしています。(米国環境保護庁調べ)
毎年約24万件の水道管が破損し、水が出なくなり、日常生活に支障をきたしています。
アメリカの自治体の水道は、120万マイル以上の水道管に責任があります。
古い水道管の修理や交換には、今後20年間で1兆米ドル以上の費用がかかると言われています。
(米国環境保護庁調べ)
(ユタ州立大学調べ)
(アメリカ水道協会調べ)
アメリカの自治体の水道は、120万マイル以上の水道管に責任を負っています。(ユタ州立大学調べ)
古い水道管の修理や交換には、今後20年間で1兆米ドル以上の費用がかかると言われています。(アメリカ水道協会調べ)
水や空気などの公共財をいかに効率的に管理するかという問題は、経済学で古くから研究されてきました。一般に、市場は公共財の資源配分を効率的に行うことができないと考えられています。公共性の高い活動は必ずしも経済的に評価されず、市場の外で交換されます。そのため、一般市民は、インフラの状態に関する情報をサービス提供者に提供するような活動を行うインセンティブがありません。しかし、このような一般市民が行う活動を適切に評価し、帰属させることができれば、公共財を効率的に管理することが可能になるかもしれません。(Coase Theorem, 1960)
Source: Average Distribution Losses in Percentages. Adapted from Europe’s water in figures